箱ふぐ日記

みんな ええようになったら ええなぁ

2018年2月第4週所感

以前からたまに考えてたんだけど、いつか私小説を書いてみたい。誰も読まなくていい。完全に自分のためだけのもの。

 

仏門に入ったり何かに入信することもありそうなんだけど、なんだかんだでやらない気がする。(托鉢しているお坊さんに相談したことはある。)

なぜか小さい頃から、お数珠を欲しがったりお仏壇にお参りするのは好きだった。

 

地下鉄サリン事件の後、オウム真理教がまだ盛んに布教活動してた頃も弱っていた。何もできなくてひたすら家で伏せていた。

街頭でオウムに勧誘された友人もいたその頃、なぜ私に勧誘が来ないのか不思議だった。神様でも悪魔でも何でも良いから、助けてくれる存在がいるならすがりたかったのに。

でも、外出する気力がないのが幸いしたのか、何にも入信しなかった。私の中に神がいないからかもしれない。

 

この時期はフィクションを受け付けられなかった。ひ弱な自分が目の当たりにした事実に打ちのめされて、人間の想像力が生み出すものが馬鹿馬鹿しいとしか感じられなかった。この時期のことは記憶が不鮮明だ。この時期のことは友人にも「え?何で覚えてないの?」と言われたりする。生存本能のようなものが、思い出すことを避けているような気もする。

 

たまに妄想小話を書くと、私の中の何かが成仏するような気持ちになる。でもそれは根本にあるものを小出しにしてるだけで、根本的な要素を無意識に避けているのかもしれない。

 

このまま思い出そうとしない方がいいのかもしれない。でも何かがくすぶってるような気配がある。

 

 

8月第2週所感

お盆休みに入った。

 先日9日は昨年以来2度目のWorld beer summitでZazen Boysのライブをたらたらと見ていた。

去年あたりのことは今でもあんまり思い出したくない。でもその頃よりなってると思う。去年も同行した友人に近況を話したら「まー、立派になって」と言ってくれた。何かといろいろとありがたい。

 

今年は加賀温泉郷フェス、ワーハピとひと夏で二つのフェスに行くことができた。自分史上初の出来事だ。

 

まだ、っていう言い方をしていいのか分からないけど、遊びで何かのイベントに行くのは相変わらずいきあたりばったりで、チケットだけ確保したらその前後はぞんざいにしている。加賀フェスはできれば金沢21世紀美術館にも行ってみたかったんだけど、時間やら何やら足りず、本題のフェスのみでとんぼ返りに終わった。

 

でも加賀フェスは楽しかった!あの環境なら熱中症で倒れる人はそうそう出ないはず。何より一番楽しみだったtofubeats、期待以上にめちゃくちゃ楽しくて、気がついたら最前列にいました。なんつうか、「ポジティブ馬鹿」みたいなものには決してならず、嫌なことだってそりゃあるけど、楽しめるものは楽しもう、みたいな逞しさがありました。

当日同じく参加してた藤井隆(この日は一日に2回「ディスコの神様」を聞けた日)は余りの礼儀正しさ、徳の高さで殆ど後光が差してた。

 

次の目標はもうちょっとでいいから早めに予定立てる、長めの視点を持つようにすること。 

 

 

Alexander Mcqueenと映画『SUPER FOLK SONG ~ピアノが愛した女。~』

10月から通い始めた職業訓練校も折り返しを迎えた。

 

職業訓練校に通うのは自慢じゃないけど2回目で、前回は9年ほど前で3ヵ月のコースだった。

今勉強してることと分野としてはほぼ同じだけどブランクがあるし職場で見よう見まねと独学で覚えた部分もあったので、前回より訓練期間が倍の半年で求めるカリキュラムのある今回のコースを選択した。

 

通い始めはそれまで伏せっていた反動と、多彩で優しいクラスメイトに恵まれたおかげで浮かれていた。でも“万事快調って訳にはいかないみたいね"(©ピチカート・ファイヴ)って歌もあるように、年末年始は沈んでいた。

 

ヤケでほんとは飲んじゃいけないお酒を飲み、懐具合も弁えないで電気グルーヴのライブDVDを買い、副音声で再生して馬鹿笑いしながら繰り返し見た。

 

DVD以外にはPinterestに入り浸って、元々好きだったAlexander Mcqueenのショーの画像をひたすら眺めていた。

もちろん、あんなハイブランドの服は鑑賞用でとても私には手が出せない。服飾の知識もない。「きれいだなー、かっこいいなー」と惚れ惚れしながら眺めてるだけだ。

 

ただ、ファッションと芸術の境目(そんなものがあるかは分からないが)の綱渡りを続け、服がなし得る可能性と美しさをひたすら求めているように見えるマックイーンの服を見てると勇気付けられる。

ジバンシーのデザイナーを務めた時は相当叩かれて、後々本人も「引き受けるべきではなかった」と語っていたらしいが、どの時期の作品を見ても誇りと美への尊敬があって勇猛果敢な姿勢に励まされてるような気がしてくる。

 

どの時期も今のサラ・バートンに代わってからの作品も好きだけど、1996年~2001年あたりはのびのびと作ってるように感じられて、特に目を引く。(と思ったけど2008年もいいし、2015年もいいなー…ジバンシーのも好きだし。選ぶの難しい…)

 

そんな風に現実逃避している内に年末年始の休校期間が終わり、授業が再開した。残りの期間はあと2ヵ月ちょっとしかない。何をしていても時間はどんどん過ぎていく。でも、自分自身の駒を進める勇気は萎えたままだった。

 

そうしてPinterestを眺め続けてるうちに、マックイーン本人のことを考え始めた(他にやるべきことあるだろ私…)。

彼は2010年に自宅クローゼットで自ら命を絶った。16才からテーラーの仕立て職人として働き始めた後に名門校で学び、高名なスタイリストに見出され、天才と評された。でも、それほど名声を得た彼も自殺してしまうほどの何かを抱えていた。

 

マックイーンの服に限らず、私がうっとりと眺めて憩いや勇気を得ている作品は、誰かの途方もない苦悩や努力で作られている。

私はこのままずっと、それを鑑賞してるだけでいいの?

 

そんなことを悩みながら、何か糸口がつかめるんじゃないかと期待して、一昨日映画『SUPER FOLK SONG ~ピアノが愛した女。~』を見に行った。

1992年の矢野顕子のピアノ弾き語りアルバム『SUPER FOLK SONG』のレコーディングを撮影したドキュメンタリー映画だ。

 

矢野顕子の演奏はいつも「歌が歌えて、ピアノが弾けるってなんて楽しいの!」 という幸福感に満ちている。でも、モノクロで映し出されるこの映画では、思うようにいかず時に鍵盤を叩くほど苦しむ、今まで見たことのない矢野顕子の姿が映し出されていた。

 

エンジニアにマイクの位置の調整を頼む声ですら音楽に聞こえる。歌声は滑らかで情感たっぷり。彼女に弾かれるスタンウェイは絶対幸せだと確信するほど、ピアノの演奏もリズム感も並外れて素晴らしい。そんな天才以外の何者でもない矢野顕子は、自分自身を信じながらも易々と音楽制作をしていたわけではなかった。

 

途中、アメリカでのマネージャーが録音現場に訪れ、矢野顕子を励ます言葉が忘れられない。

「ミスばかり気にしてるから、素晴らしい点に気がつかないんだ」

(※大意なので正確ではありません)

 

私は何をしても滅多に満足できない。例えば、料理がおいしく作れて誉められても、「あの時炒める時間を短めにしておけばもうちょっと食感がよかったのに」とか「カシューナッツよりもゴマの方がもっとおいしくできたんじゃないの?」とか悔やむ癖がある。

それだけにこの心優しいマネージャーさんの言葉はまるで私自身を励ますように響いた。

 

もちろん、思い悩む場面ばかりではない。なんとか満足のいく演奏ができて喜ぶ姿はとびきり可愛らしいし、録音がスムーズに進んでる間はライブに来た時同様にリズムに乗って歌と演奏を楽しんだ。

 

終演後パンフレットを買って読んでいたら、映画館で流したよりも多めの涙がこぼれた。

今回の再公開にあたっての矢野顕子のインタビューでの発言だ。

 

「私にとっては、私の音楽が生まれる場を、本来、人に見せるべきではないというか、見せるということが頭の中にないから。それを撮るのは彼(※映画監督)の仕事。私は自分の音楽を作ることをするだけ。だから彼らのためにサービスすることは一切やってない。」

(※パンフレットP.4から抜粋)

 

服だって音楽だって、「こんなに苦しんで悩んだ果てに作ったものです!」なんてことは、仕事仲間や友達に愚痴る以外言う必要はない。

 

作品が生まれた背景を知ることで、よりその作品を深く楽しめることはあるけど、それは受け取り手の領分だ。マックイーンや矢野顕子みたいな天才と比べるのは馬鹿げてるけど、自分のやるべきことをやっていくしかない。

 

もう1月も半分過ぎちゃったけど、再び少しだけでも歩みを進めよう。

 

 

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映画『怒り』感想

 

教授の音楽に飢えていた。

今年の始めに『母と暮らせば』は見たが、その後に公開された『レヴェナント』は不調で見に行けなかった(サントラは後日聞いた)。

中学2年生に坂本龍一ファンになって以来、最大の教授ロスに陥っていた。

 

そこで自分の復調とほぼ同時期に公開されたのが『怒り』だった。

シン・ゴジラ』を見終えた後、映画自体への感慨に負けず劣らず大きかったのは、精神的にダメージを受けそうな映画を見に行けるようになったことの嬉しさだった。それまでは心を少しでも脅かしそうなものは、一切避けていた。

シン・ゴジラ』を無事見られたことで安心と喜びと自信を得て、『怒り』を見に行けた。

 

見終わった直後、頬に残ってる涙を拭いてこの映画に登場した全員を抱きしめたくなった。

 

とにかく、「おとうちゃん!」と何度も繰り返す宮崎あおいの声が頭からはなれない。

三億円事件を新鮮な解釈で描いた、『初恋』の役柄から何て遠くまで来たんだろう。宮崎あおいファンとはとてもいえないが(一番よく見てるのは『少年メリケンサック』)、こんな宮崎あおいは今までになかったんじゃないかな?

ラース・フォン・トリアーは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』以降の作品を「黄金の心三部作」と称していたが、今作での宮崎あおいにもそれに似たものを感じた。

 

宮崎あおい演じる愛子が、渡辺謙演じる父親・洋平に言い放つ「おとうちゃんは、あいこがあいこだから、幸せになれないとおもってるの?」という台詞がむちゃくちゃ刺さる。

 

恐らく愛子は軽度の知的障害発達障害がある設定だ。愛子自身も「愛子みたいな人が普通の人と幸せになれるはずがない」と言ったりする。娘に甘い父洋平も、娘のハンディキャップを、甘やかしても許されうる条件として、自分に言い聞かせるように諦めている。

だからこそ、愛子が電車の中で真正面を力強く見て微笑む最後の表情が忘れられない。かなり体力を要する映画だが、あの顔を見るためにもう一度映画館に行きたい。

 

エンドロールで教授の音楽を浴びるように聞けたのは幸せだった。私の中では、これまで教授が手掛けた映画音楽の中でもかなりの名作だ。(サントラ買いました!)

でも、見終えた後はこの映画の熱量と含むものの重さに押しつぶされかけて、渇望していた教授の音楽には集中できなかった。

 

ただ、映画自体には疑問も残る。犯人の特徴として出てきた3つのホクロが、途中からうやむやになっている。力でねじ伏せるような映画だけど、感銘を受けただけに細かい欠点が気になってしまった。

 

確かめる為に原作の小説を買った。読み終えたら加筆するかも。分からない箇所、あやふやな箇所、映画と何が異なるかを確かめたい。

(気が向いたら原作読了後にまたここで書きたい。)

 

 

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映画『シン・ゴジラ』感想

 

※ネタバレ含みます。

 

ずっと見たかった映画『シン・ゴジラ』をやっと見てきました。

 

今までに見た関連作は第1作と、2014年の渡辺謙出演作の二つだけ。でもネットでの評判の高さに釣られて見たい見たいと願いながらも日程が決まらず、事前情報は避けるようにしてても耳年増になっていくばかり。ようやく見に行く日にちが決まっただけで嬉しかったぁ…

 

昨日は友人と上映時間の40分前に待ち合わせたのに、チケットは既に売り切れ!連休中の人出の多さもあったにしても、ゴジラ人気ナメてましたよ。

仕方なく、一番上映時間の近い別の映画館に移動し、なんとか次回のチケットを確保。そこでもチケット購入時に席の8割以上は既に埋まっていました。

 

感想としては、私は好きです!

内閣の不甲斐なさや縦割り行政のもどかしさ、それを知恵と努力で乗り越えて国民の為に尽くす官僚や政治家。外交下手のレッテルを跳ね返すような外国への根回し。

経済的な損失や事態収束後の各国からの支援との利益考量などなど、政治的な群像劇の要素に引き込まれました。

登場人物だと赤坂秀樹(竹野内豊)、カヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)、尾頭ヒロミ(市川実日子)が特に好き。カヨコを見てピンヒールが履きたくなりました。

その他にも珍しくシリアスな役所の松尾スズキ自衛隊幹部役の橋本じゅん厚労省課長役の津田寛治、オタク研究員役の高橋一生も面白かった。豪華キャストなので、きりがないですね。リピーターが多いのも納得しました。

 

あとはゴジラの禍々しさ。

ゴジラキャラクターデザインの竹谷隆之さんは、『えの素トリビュート』に写真が掲載されたフィギュア『ウチュウのエノ』でそのエログロさと躍動感に満ち満ちた姿に衝撃を受けて以来その名を頭に刻み込まれていたので、『シン・ゴジラ』への期待値は自ずと上がりました。

実際にスクリーンで見たゴジラは期待以上の威容でした。2014年版が人類を救う神々しいゴジラだったのに対して、今作のゴジラは天災そのもの。私は東日本大震災で直接的な被害はなかったのですが、壊滅状態の街並みや避難所の様子はさすがに見ていて辛くなりました。

 

見終えた後、友人としばらく話し合いました。友人は特撮ファン兼ミリオタ、特に航空自衛隊の大ファンにして愛国者。思想信条は私とほぼ逆です。

意見は異なるだろうと予想していましたが、ゴジラにも自衛隊にも格別愛情が深い分、ガッカリしたようです。(でも、「2014年版と比べれば日本映画である今作の方が好き」と言ってたのには思わず笑いました。)

 

ただ、識者というのは有り難いもので、私が全く知らない過去の特撮映画、兵器や軍用機について詳しく解説してくれました。持つべきものはオタクの友人。

彼と仲良くなるまでは「愛国心はならず者の最後の砦」と盲信していましたが、一つ二つの要素で人との付き合いに壁を築き上げるのはもったいないなー、と考えを改めました。

 

曰わく、自衛隊が最初に使用する20ミリのガトリング砲は映画『宣戦布告』では敵を一網打尽にする威力のある兵器だそうです。『宣戦布告』のあらすじは「国籍不明の特殊部隊が日本に上陸し、国内外を震撼させる」というものでこれも面白そうなので見てみたくなりました。

 

話はどんどん脱線しますが、友人の感想を聞いて、マニアほど期待値や望む内容が細かくなって新作を受け入れがたくなるのはどのジャンルでも同じなんだと実感しました。

知識がない方が楽しめることもありますよね。

 

 

 

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記憶と知識

今日、こんな記事を読んだ。(夢十夜は無関係)


スマホなどデジタルデバイスへのデータ保存が「デジタル健忘症」を招く? カスペルスキーが解説 -INTERNET Watch

思い出そうとするより検索する方が早い。

よく、「思い出そうとすることが記憶力の維持には大切」と言うが、目先の手軽さに負けてどんどん易きに流される。初めてガラケーからスマホに機種変更して、一番の利点は「すぐにググれること」だった。

分からなくてググって見つけた情報は、忘れたらまた大海原のどこかへ流されてしまうのではてブするか、キャプチャを残すかメモ帳に入力して保存。私の記憶力はかなり鈍っている自信があった。

 

 そこで、文末で紹介されていた「デジタル健忘症チェックテスト」をおびえつつ試した。


「デジタル健忘症」チェックテスト | Kaspersky Daily - カスペルスキー公式ブログ

 テスト結果↓


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目を疑った。どっかでご飯でも奢ったことあった?逆に不安になるほどの緩い結果だった。

 

ただ、テスト結果に安心して胡座をかくつもりはないが、この記事で知識の有無の二元論を久しぶりに思い出した。不定期的にぶち当たる問題だ。

 

アインシュタインは自分の身長を覚えていなかったという逸話がある。覚えない理由は、その情報が必要になった時に調べれば済むから、と答えたと言う。逸話の真偽はどうでもいい。明解で好きな考え方だ。

 

塵も積もればで、小さな知識の集積がそれなりにまとまった考え、アイデアの基になる。それは仕事でもそれ以外でも、生きていく上で欠かせないはずだ。

 ただ、オタク気質で道楽者の私は、調べれば分かるはずの事柄を気が付けば必死にかき集めることがちょくちょくある。

 

休養中、抑鬱症状の一つで文字情報を追うのが辛くなり(極端に「目が滑る」状態)、それまでほぼ放置してたピンタレストやtumblrで気を紛らわせていた。

 で、好きな画像をピンしたりリブログしてると、「あぁっ!これ知らなかった!」とか、「こんなのもあるのか」とか、些末な情報をちまちま拾っていく楽しみにかなり助けられた。古本屋街をバーチャル散策しているような気持ち。アインシュタインの清々しい境地には程遠い。

 

趣味に関して言えば、知識はあったに越したことはないけどあるかないか、1かゼロかの話になってしまうのは何だか貧しい。

1を積み上げていけばそれなりの数字には辿り着くけど、その数値を競い合うことは虚しさを感じる。

 

ある情報について、それを単なる知識の一つとするか、他の事柄に繋がる可能性がある知識とするか。

馬鹿とハサミと同じく、情報も捨て駒にしないでなるべく実のある使い方がしたい。かつ、記憶力も鈍らせないようにできれば理想。

 

 

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 ↑ピンタレストで知った浮世絵師、小原古邨。動物の絵がどれも素敵なのに、書籍が少ないのが残念。もっと見たい!

 

 

 

奇しくもまだ8月

※ネタバレを含みます。


今年4月からうつ病で休職し、5ヶ月近く経った。
数えてみれば心療内科の通院歴は15年ほどになるが、いまだに不調の来襲には毎回あたふたしてしまい、なかなか「よう!また来たな!」と余裕を持って迎えられない。

15年前の初診時は私にとって病気も苦痛も受けなければならない罰で、治療も回復も許されないと信じ込んでいた。病気とはいえ恐ろしい。
それに比べれば今回は病状も軽いし、これまでの経験で多少はやり過ごすコツも身に付いている。

通院と時間薬(服薬も欠かせないけど、時間薬の効能ははるかに絶大)のおかげで、7月辺りからようやく調子が上向き始め、凍りついていた思考も少しずつ生き返ってきた。

大島弓子の『8月に生まれる子供』について最近良く考える。
主人公は異常な速さで老化が進む奇病を患う大学生の女の子。認知症も進み、見当識も危うくなり怒りっぽくなっていく。

当然、家族や周囲の人達も困惑する。
通院途中の電車で席を譲られるのは同行の母親ではなく、老婆にしか見えないが実年齢は二十代の主人公。善意による気配りに娘も母親もショックを受ける。

治療法もなく病状は悪化し続け、主人公は知力、身体能力とも幼児並みになる。誰もが諦めかけたところで主人公は忘れたはずの単語を覚えたかのように発し、成長しているような変化が表れる

あくまで漫画だしファンタジーだけれど、この奇跡的な回復は主人公がそう望んだ意志があったからこそ生じたはずだ。
どん底としか思えなくなったら諦めるか、無駄でも足掻くかの2つどちらかしか選択肢はない。

子どもの頃から私のコンプレックスは「普通じゃない」、「十人並みに及ばない」と見なされることへの恐怖だった。
でもそのコンプレックスを裏付ける明確な根拠はないのに。

そのコンプレックスもあってか、今回の休養でいわゆる「病気持ち」のレッテルが医師や公的機関のお墨付きになったのは本当に恐ろしい。

今認識している恐怖は2つある。
仕事を筆頭に今まで通りには出来ないかもしれない恐怖と、ここまで怖がるほど病気持ちという属性を自分とは無縁だと特別視していた恐怖。

普通でありたい、十人並みでありたいという固執の副産物は、病気などによって私の頭の中で勝手に作り上げたその枠から外れた人への差別意識だった。

ただ、剥がれたメッキはどうしようもない。地金が見えたからといってメッキをし直すのも馬鹿げている。

恐怖はどうやっても恐怖でしかないけど不思議と清々しくもある。開き直れたからだろう。

15年以上前の成人式は不参加で、振り袖を着て記念写真を撮っただけだった。

もしかしたら今、高台からバンジージャンプするような成人の儀をやり終えかけてるのかもしれない。


大島弓子セレクション  セブンストーリーズ

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